
私の好きなJR東京駅は、丸の内側の駅舎を改築して昔の状態に戻すという。丸の内、八重洲、日本橋の再開発の計画は今でも続く。急激な不動産価格の上昇が起こり、好景気を謳歌した不動産業界も資金繰りに窮して倒産(民事再生申請)が相次いでいる。そして空室率が上がり徐々に悪化し始めているオフィス市場は、今後もやはり影響を受けることになろう。団塊世代の退職と、新卒採用の縮小は、当然不動産市場へのインパクトが大きい。一人当たりが使用する面積は下落するのだろうか。だとすれば単純に比例するのではなく、乗数的な影響を及ぼすことになる。空室率はキャッシュフローを計算する時点で反映させることになろうが、どこまで織り込んでいるのだろうか。空室率が上がり、更にキャップレートが上がれば、結果は見えている。先行指標としてのインデックスが未発達の日本のマーケットでは、急激な下落という事態も想定しなければなるまい。

レバレッジのかかっている業種はどうしてもボラティリティが高くなってしまう。一部上場企業であるかどうかというのは、こういう状況ではあまり意味が無いが、学生にそのようなことを理解できるだろうか。もちろん好景気を謳歌する時には、周りから羨望のまなざしで見られようが、今の状況を考えると好景気が来るのは随分先な気がしてならない。ここまで円高が進むと、海外のファンドも日本の不動産を買うという気が起きないだろう。むしろ不動産価格そのものが未だ大暴落していない段階で、しかも円高外貨安による利益をrealizeするためにExitしてしまおうと考えるのが自然である。2003年頃に底を打ったとされた不動産市場も、JREITの規模拡大や日本人の不動産好きも相俟って、急激に価格上昇を続けた。円安の継続から外資ファンドが続々と不動産を買い付け、一度ついた勢いが止まらなかったこともあり、多くの地域でマンションが大量に捌かれた。結果として新築マンション市場は崩壊し、値崩れを起こしているが、買ってしまって住んでいる人からすれば、家賃を払っていると思えば良いと考えて割り切るのかも知れない。

もちろん住宅ローンという年収の何倍もの負債が突然バランスシートにのる訳であるから、人生のレバレッジは上がる。会社が倒産したりすれば、デフォルトして差し押さえを食らう可能性が高くなる。ある程度キャッシュを貯めてから購入するというのが、日本人の国民性からすれば普通である。ここ数年は金利の安さや銀行間の競争もあって殆どローンで不動産を購入するというのが当たり前だった。サブプライムローンとまでは行かないだろうが、アメリカ型のレバレッジというものを知らず知らずに使用している恐ろしさがある。理解してリスクテイクするのであれば良いが、一般の人に不動産価格のValuationが出来るほどの知識があるはずもないし、知識があったとしてもそこまで金と時間をかけることは難しいはずである。不動産という買物は大きい買い物、あるいは投資であるから、それだけに金も時間もかけて事前に調査をすることが当然必要である。そういった習慣があまり無いのと、セルサイド(不動産業者)に購入者を思うまともなアドバイスを出来る者がいないし、そもそも薦められるようなまともな物件が無いのかも知れない。

もちろん素晴らしい物件もあろう。しかしながら、そういったものを手に出来るのは、余計なものも含めて金を払える一部の富裕層に限られており、結局のところ貧困のスパイラルというものは日本にも存在する。衣食住というのは経済のみならず、人間が生きる上でのインフラであり、一定の水準を確保することが国としては必要である。ところが数十年後のことを考えない質の低い物件を提供し続け、いつまで経っても中古市場が安定しない。JREITが抱え込んだ不動産に適切なDue Diligenceが行われているかは疑問である。そういった事情がマーケット参加者に分からなければ価格には反映されないのだろうから、判明した段階ではやはり暴落という結果に落ち着くことになる。JREITは既に暴落したと言えるだろうが、先行指標としての株価が示す未来は決して明るいものではない。多くの人が指摘していた不動産バブルも、上昇を続ける限りはバブルではないということになってしまい、相場というのは人間の欲に左右されるのだということが良く分かる。

人は行為を正当化してしまう。ストレスに対する知恵なのだろうか。自分に都合の悪いことを受け入れることは、結果として損をするということを徐々に学び、年を経るに連れて融通が利かなくなる。結果として自分の主張を通すことで身を守ろうとする。社会が全体としてそういう方向を向いている。経済のパイが小さくなれば、経済的満足を得られる人間はそれだけ少なくなるわけであるから、これを解決するためには、今ある税収をどう分配するのかではなくて、海外を含めた経済規模を拡大する施策をとるか、いろいろ諦めるかのどちらかである。既にかつて世界に誇った日本の中流階級の豊かさというものはハリボテと化しており、未だにマスコミの流す日本びいきの報道を信じる国民は哀れである。消費税を上げるというのは中期ぐらいでは効果があるだろう。フランスなど19%である。ここまではすぐには行かないだろうが、アメリカとかそれぐらいの国と同水準になるのは至極自然である。長期的には何かを諦めなければならない。今の経済のパラダイムでは、中流階級の厚みがあるということを諦める方向になるだろうか。これを維持するとすれば、やはり無理が生じる。今のような歴史認識でどうのこうの言うような状態では、EUのようなアジア経済圏を平和に構築することは難しいだろう。日本の軍国化は海外からすればそれぐらい可能性が高いものであると信じられている。最近の愛国化・右傾化も構わないが、経済規模の拡大という意味では、中国などの力に頼らなければ既に日本という国は破綻している。それでも諦めることが無理だというのであれば、戦争という過ちを犯し崩壊するか、後進国という状態を受け入れるしかない。その時には日本だけではなく、他の先進国もその地位を失っているのかも知れないが。
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