2008年12月26日金曜日

Ebisu 10

放射冷却により急激な気温低下を見せた今日の東京。久々に札幌の寒さを思い出すほどである。クリアな空についカメラを向ける。年内最後の営業日を迎え、残った仕事のヤマには目を瞑り、多少の罪悪感と解放感を両方併せ持って香港・広州へと羽田からフライト。途中の桂林へのチケットは手配が未了ではあるが、広州での滞在を長くすることも出来るだろうし、あまり考えていない。8月以来の旅行である。広東省エリアは中国経済の2ケタ成長を牽引してきた世界の工場であり、広州や深圳を主要都市として抱える。深圳には一度足を踏み入れたことがあるが、経済成長を実感するような経験をした訳でもない。今回訪れる広州では、工場の閉鎖が相次ぎ、失業者数が急激に増加しているという。治安の面でもそもそもあまり良くないという話であるが、悪化しているということは容易に推測される。中国の都市は人口も多く、一般市民はまだ十分な道徳水準にあるとは言えない状況にある。切符を買う場合に並ぶというようなことが出来ない人は当然日本より多い。
アメリカの不動産価格の上昇と、ホームエクイティローンによる借入消費主導型の経済が破綻し、結果として中国と日本という米国を最大の貿易相手国とするアジアの国は経済成長をストップさせた。中国は公共投資に莫大な金を使って、経済成長路線の立て直しを図るが、様々な問題を抱えていることが足枷となっている。それでも成長していくことは間違いないだろう。日本が高度経済成長をした時にも、様々なものを乗り越えた訳である。ただ今回の金融危機、あるいは経済の凋落というものは100年に一度のものであると言われている。これがどの程度の影響を与えるのか分からないし、経済成長の巻き戻しが思ったよりも厳しい場合がある。蓄積した人材や工場などの資産も、使う場所がなければ成長とは呼べないからである。監査法人も経営者達は人を増やせば成長した気分になるのかも知れないが、殆どが遊休資産の状態であり、これを資産と呼べるのかは微妙なところにある。積み重ねる中でも取捨選択をし続けなければならないのは当然のことである。中国経済の中でも、遠きアメリカを震源地とした経済危機で最も揺れた広東省。これをこのタイミングで見ることが出来るという巡り合わせに感謝しなければならない。
現地に行くことで、海外に対する情報の見方というものはまるで変わる。特に日本で報道される中国などの情報にはバイアスがあって殆ど意味が無いわけで、実際に見に行くに限る。全てを失った訳ではない。所詮は人為的な危機である。多くの人は普段通り仕事をして、単に株価が下がったことで不況なのだろうという認識をしている程度である。日本だって不景気を煽るようなニュースを一斉にマスコミが報道することで、関係のない人まで不景気を実感する訳である。消費者は敏感なので、消費も滞る。これが情報の偏りによる負の連鎖である。金融、不動産、自動車という業界に勤める多くの人は日々不安である。それでも日本の企業はまだマシなのかも知れない。不動産は瞬間的に謳歌したREITバブルを反省すべきである。まあ彼等に反省という文字は無いかも知れない。自動車もそもそも不要であるという方向に向かうだろう。将来にわたるインターネット等の更なる発展により移動する必要が無くなることが想定されるからである。必需品ではなく、ただの贅沢品として自動車が扱われる時代に戻れば、原油の価格が上がることもない。過去の人類の歴史を思えば、技術革新による効率化が枯渇の危機を乗り越えてきたように見えるが、今後の技術革新というものはどこから訪れるのだろうか。過去にしがみつく日本では無いように思う。
天才という存在はすでに日本では生まれなくなり久しい。たまにいる猛烈な秀才は、生まれる国を間違えたのである。多くの民にとって平和で暮らしやすかった日本というものは、既に幻想であり、全てのものを捨ててでもそれに備えなければならない時代が来ている。フラット化する世界で読んだ内容は、海外旅行をする度に現実であるということを認識させられる。自分が普段取り込んでいる情報というものが、いかに偏っていて、いかに詰まらないものであるのかということに気付かされる。会計士だろうがCFAだろうが、道具だけを学んだとしても、そのインプットの元となる観察対象、つまり情報というものの質、あるいは量というものが、結果を左右してしまうのであり、真実に近い情報、源流をたどる作業というものをやはり繰り返さなければならない。これは金と時間がかかる。金は無限にすることが出来る人もいるが、時間を無限にするということは、遥かに難しい。旅行に行くことで、普段よりもリスクがあがる。この結果として、自分の人生が終わってしまうという可能性もあるのである。その時は誰にどうやって情報が伝わるのだろうか。そういった先を見通すほど余裕がないのが、この12月、師走というものである。

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